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【金属加工豆知識】SKD11とS50C、磁石にくっつくのはどっち?焼き入れで磁性はどう変わる?
はじめに
加工現場で「この材料、磁石にくっつく?」という会話、意外とよくありますよね。
今回は、高硬度な工具鋼「SKD11」と、汎用性の高い炭素鋼「S50C」の磁性(磁石へのくっつきやすさ)について解説します。
特に、焼き入れ前後でどう変化するかも含め、現場目線でわかりやすくまとめました。
S50Cの磁力の特徴
- 主成分は鉄と炭素のみ → 合金元素が少なく、磁性が強い
- 組織はフェライト+パーライト → 磁石に非常によくくっつく
- 「ザ・鉄」という性質で、磁気治具などにも使いやすい
SKD11の磁力の特徴(生材)
- Cr(クロム)などの合金元素を多く含む
- 合金元素は磁性を弱める性質がある
- 組織も複雑(フェライト+炭化物など)→ 磁石にあまりくっつかない
SKD11の磁力の特徴(焼き入れ後)
- 焼き入れでマルテンサイト化 → これは強磁性体
- そのため、生材よりも磁石にくっつきやすくなる
- ただし、高温焼き戻しすると再び磁性が弱くなることも
結論まとめ
材質・状態 | 磁石への吸着力 | 主な理由 |
---|---|---|
S50C(生材) | 非常に強い | 鉄ベース+単純組成 |
SKD11(生材) | 弱い | 合金多く、磁性が低下 |
SKD11(焼き入れ後) | 中〜強 | マルテンサイト組織で磁性アップ |
簡単に言えば、S50Cの方がよく磁石にくっつく。
ただし、SKD11も焼き入れをすると磁力が上がるということを覚えておくと、現場での判断がしやすくなります。
おわりに
材料の磁性は、加工方法や使用機器の選定にも関わってきます。
磁気治具の使用や、磁気探傷検査(MT)を行う際には、ぜひ今回の内容を参考にしてください。
他にも金属材料や熱処理に関する情報を発信しています。
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