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ホールテストだけでは見えない世界 ─ マシニングセンタの穴加工と測定の基礎力

ホールテストだけでは見えない世界 ─ マシニングセンタの穴加工と測定の基礎力

シリンダーゲージは“現象”を、デジタルは“結果”を教えてくれる。

マシニングセンタで穴を仕上げたとき、若いオペレータがよく使うのがデジタルホールテストです。数値が瞬時に出て便利ですが、実はこれだけでは「加工の状態」までは分かりません。昔から使われるシリンダーゲージには、アナログゆえの強みがあります。

1. なぜ若手はデジタルホールテストを使うのか

  • 測定が早い
  • 扱いやすい
  • 再現性・バラつきが少ない
  • 結果をすぐ共有できる

その反面、加工不良の“兆候”は見逃しやすくなります。

2. シリンダーゲージでしか分からない“穴の状態”

  • テーパー度:ピークの位置で判断
  • 真円度の崩れ方:ダイヤルの動きで把握
  • 工具摩耗・片摩耗の傾向
  • 治具やボーリングバーの剛性不足の兆候

3. デジタル測定の落とし穴

  • 加工の“背景”が見えない
  • 偶然の良値を信じて不良を見逃す
  • 摩耗の進行やクセを把握しにくい
  • 次ロットで突然NGが出やすい

4. 現場で使える測定フロー

【穴加工後の測定フロー】
1. デジタルホールテストで公差内か即時確認
2. シリンダーゲージでテーパー・真円度の確認
3. 異常があれば工具状態を点検
4. ボーリングバーや治具の剛性チェック
5. 次ロットで再現性チェック

5. 若手教育で重視すべきポイント

  • ピークの読み取り方法
  • ダイヤル挙動と刃先状態の関連付け
  • 測定ログ(経時変化)の読み取り
  • 原因推定の簡易フロー指導
POINT:デジタルは「結果」、アナログは「原因」。
両方扱えるオペレータが最も不良率が低い。

6. まとめ

デジタルホールテストは非常に便利ですが、加工の異常や工具摩耗の兆候を読むにはシリンダーゲージが不可欠です。これからの現場に求められるのは、デジタルとアナログの両刀使い。数値の裏にある“現象”を読み取れるオペレータこそ、品質を安定させる鍵となります。