『教えてくれなきゃできないと言っている人間には、教えたってできない』
「最近の若い人は」、と言うと笑われそうですが、
それでも少し気になっていることがあります。
「教えてもらってないからできません。」とか逆に
「私は教えられた通りにやりましたから」と言って
開き直るような
マニュアル型の人間が増えてきたように思います。
そんなとき目にした
一龍齋貞水(講談師・人間国宝)の言葉があります。
僕はたまに
「貞水さんはあまり後輩にものを教えませんね」って言われるけど、
僕らは教えるんじゃなくて伝える役なんです。
伝えるということは、それを受け取ろう、
自分の身に先人の技を刻み込もうとするから伝わっていくもの。
教えてくれなきゃできないと言っている人間には、
教えたってできませんよ。
実は我々も若い頃、
自分の技がつたないのは先輩が教えないからだって
愚痴を言っていたことがありました。
そうしたら師匠に言われましたよ。
お前たちは、日頃いかにも弟子だという顔をして
俺の身の回りの世話をしているくせに、
俺が高座に上がっているとき、
それを聴こう、盗もうって気がちっともない。ホッとして遊んでいる。
俺が高座に上がっている時は、
どんなに体がきつかろうと、お金を払って見に来てくださっている
お客様の為に命懸けでしゃべっているんだ。
その一番肝心な時に、
聴いて自分から習おう、盗もうって気がないから上手くならないんだ。」
こういう事は何も伝統工芸の世界に限ったことではありませんよね。
スポーツでも趣味でも勉強でも
あなたの仕事でも同じことです。
何かを学び成長しようと思ったら
当たり前のようですが
自分で悩み、自ら気づきを得ていくしかないのです。
そういう意味では
「教える」という事は、
本当の意味で「教えない」ことではないだろうか。
とさえ思ってしまいます。
ただ、世の中はスピード時代。
どうしても会社などでは早く戦力にしたいとか、
小さなミスもさせたくない
などと思いすぎて、
促成栽培のようにどんどん細かいことまで
教え込もうとします。
そのうち受ける方も
「教えてもらって当たり前」
「教えてもらってないから、できない」
などという風になっていくのです。
しかし、これでは即戦力にはなっても
ロボットでもできるような薄っぺらなものにしかなりません。
世界に通用するようなレベルの高いものを狙っていく、
あるいは自分の納得できるようなものを
会得していくにはどうしても自ら学ぶしかないのです。
なにしろ、
「簡単に教えてもらったものは、すぐに役に立たなくなる」
ものですから。
【学びに対する向き合い方】
『学びたい』という気持ちやモチベーションの高さが
理解度や記憶の定着に大きく影響するという
研究結果があります。
つまり、
上達する人は、真剣に教わる姿勢ができているのです。
【おまけ】
追加で知っておいてほしい言葉があります。
『答えを言うな。答えを言った途端に考えなくなる。』
(意外に答えを言いたがる指導者は多いです)
『魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ』
(「人に魚を与えると1日で食べてしまう。しかし人に釣りを教えれば生涯食べていく事が出来る」と言う老子が言ったとされる言葉)
以上の事を、教える人も教わる人も
よく理解して実践していきましょう(^ ^)