失敗から学ぶことが成功への道
最近読んで面白かった本の一つに
『考える力』というのがあります。
これは脳科学者の茂木健一郎氏が
七冠の偉業を達成した天才棋士、羽生善治氏の脳を分析し
勝ち続けられる秘策を解き明かそうとする
刺激的な対話集です。
その中で特に対局の失敗から学ぶ
大切さとその難しさに触れたところが心に残りました。
【失敗学】(失敗の理由を学ぶ)
人間が生き残る中にもいろいろな失敗や成功の体験があるのですが、
失敗の理由を学ぶ事は、
心理的には、ほとんどできないのです。
人間の脳の性質からして
成功というのは勝手に強化されるんです。
これを強化学習といいます。
でも失敗から学ぶことは非常に難しい。
失敗の原因を突き詰めて考え、
同じことを二度と繰り返さないようにするということも、
ごく単純な場合ならできるのです。
例えば、お湯を沸かしたヤカンに触れるとすごく熱かったら
二度と触らないようにするとか。
しかしそうではなく、
もう少し複雑な理由が失敗の背景にある場合、
脳の自然な学習メカニズムに頼っていては絶対にできません。
論理的に言語化し、推理して
失敗の理由を白日の下にさらさないとダメなのです。
非常に理性的な過程を経ないと、
失敗からの学習はできないので、
我々はそれを、実生活の中でほとんどやっていません。
確かに誰でも失敗は素直に認めたくないし、
たとえ認めたとしても『あれは自分のせいじゃない』とか
『運が悪かった』と考え、
一刻も早く忘れたいと思うのが普通です。
そのため分析も進まず、
学びもほとんどできていないのが実態です。
しかし、羽生さんたち棋士は
どんな勝負であれ対局の後は仲間と一緒に
理性的に延々と勝負の内容を分析し、
絶対に敗因を見つけようとします。
それを見て茂木さんは
『将棋は失敗学の大成だ。これこそが進化する源泉なんだ。』
と喝破するのです。
これと同じことが、私のやっている“ものづくり”の世界でもあります。
「技術開発の失敗」や「大きな品質問題」が発生した時、
『振り返り活動』とか『5Why分析』といって
失敗をシステム的に振り返って、真の原因を追求し、
失敗から学ぼうとする活動を行います。
しかし、このような大問題の場合と違い、
小さな個人レベルの失敗については、失敗を素直に認めることができず、
なかなか自らのメスが入らず、
失敗からの学習ができていない事が多くあります。
しかし、ユニクロの柳井正さんが言っている
『成功とは失敗を体験し、それでいて楽観的に前進していく人のことである』
という言葉を信じ、
失敗を素直に受け入れ、逃げずに振り返り
前向きに学んで行く先に、未来の成長と成功があるのです。